ブラッディ・マンディの組込み的考察2
2010-01-23


ブラッディ・マンディ・シーズン2が始まりましたね。

今回も組込みシステム的、天文ファン的に考察してみましょう。 前回とは違って、リアルタイムに観ました。

ちなみに、サーバハッキングの概要はこちらを参照してください。こちらにも突っ込みどころはあるのですが、もっと突っ込みたい根本的な間違いがあります。

セリフのおさらい

藤丸君(ファルコン)の最後の方のセリフは大まかには以下です。 「俺がハッキングしたのは人工衛星です。 あの爆弾にはGPSが内蔵され、ロシア領内を出ると 爆発のセキュリティが解除される設定がなされていたんです。 だから、ロシア宇宙軍の管制局をハッキングして 通信衛星から伝わる421便の位置・・・座標をロシア領内だと誤解させたんです。」

間違いその1

人工衛星をハッキングしたと言っておきながら文脈の後半で「ロシア宇宙軍の管制局をハッキングした」と速攻で矛盾しています。

間違いその2

GPSというシステムの初歩的な解釈が間違っています。 解説はwikiにお任せ。 簡単に言うと、自分の位置情報を知っているのはローカルなGPS受信機のみです。 その情報はどこかに通信で送って管理することはもちろん出来ますが、通常はそのようなことは不要です。 おなじみのカーナビも基本的にはスタンドアローンで独立していて、どこかと通信しないと機能が果たせないようにはなっていません。 だから「GPSが内蔵され」というセリフももちろん間違い。「GPS受信機が内蔵され」が正解。 ちなみに、GPS受信機はモジュール化されたチップを使用していますので、受信機そのものの位置情報算出プログラムを書き換えることは通常は不可能です。

間違いその3

爆弾のシステムではローカルなGPS受信機自身の位置情報と爆弾の制御プログラムのROM内に書き込まれたロシア領の座標情報を比較する程度で充分です。どっかのサーバと通信する必要はないし、その手段もない。

間違いその4

GPSのシステムは全てUSAのものです。ロシアは関係ありません。 wikiで解説しているように全部で人工衛星は30個程度あるようです。静止衛星ではありませんから、その時点で測位対象(GPS受信機)が人工衛星から受信している対象の衛星は同じではありません。

ようするに・・・

ようするにお話の「オチ」全部が間違いです。

もし本当に今回のようなことをしたければ以下の手順が必要です。

  1. 対象となる航空機のGPS受信機が測位に使用している可能性が高い3つ以上の人工衛星を洗い出す
  2. 洗い出した人工衛星全てに対してUSAのサーバ経由でハッキングして人工衛星自身の座標情報を全て誤認させるようにプログラムを書き換える
  3. 人工衛星自身の座標情報は軌道要素と原子時計の時刻情報などに基づいてその都度人工衛星自身で計算しているわけなので結局は軌道要素を間違ったものに書き換える
  4. 人工衛星自身の座標情報の誤認は対象となるGPS受信機の座標をロシア領内であると誤認させるような位置情報になるように軌道要素情報を書き換える必要がある

最後の点は非常に困難ですね。 予めプログラミングしておいて軌道要素などを書き換える準備をしておかないと到底無理な作業です。 ファルコンは2分程度でサーバハッキングも含めて作業を完了させましたが、20時間あってもできるかどうかってとこでしょ。

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