「レトロ」は「後ろへ」、「フォーカス」は「焦点」 の意味を持つ。 レンズの前群を凹レンズ系とすることで焦点を 後ろへ移動させた、 つまり光学系を前に 移動させた構成であり、望遠型レンズ[1]と 逆の構成なので「逆望遠」とも呼ばれる。
つまり、被写体側が凹レンズでカメラ側が凸レンズ系のレンズ構成のことをレトロフォーカス式と呼ぶのであって、カメラ側に凹レンズがある構成はレトロフォーカスとは呼ばないのです。 また利用形態的にも用語が矛盾している。それは「望遠型」ではなく、「逆望遠型」の光学系を指すという事。通常は広角レンズのバックフォーカスを確保するためのレンズ構成であり、拡大率を上げるための、つまり、「望遠レンズ」の構成には使われない。 私の前回の記事で、「レデューサを使った場合はレトロフォーカスと言ってもいいかもしれない」と云う趣旨のことを書きましたがこれも違います。被写体側には凹レンズ系ではなく、凸レンズ系が位置されるため、凸レンズ〜凸レンズの構成になるからです。
どんな分野でも必ず「用語」というものが存在します。
それは複雑な前提条件を含めた状況説明を省略して説明するのに便利だから存在するといっても過言ではありません。共通認識するための道具とも言えます。つまり、多くの人間が使っている言葉は「用語」と言えますが、多くの人間が使っていない言葉は「用語」ではありません。
また、用語には原理的な説明を表すものと利用形態を表現するものに分けられると思います。
原理的なものとは理論、原理、原則、法則、学説などに由来するもの。天体望遠鏡の光学系の分類で言えば以下のようなものがその分類になるでしょう。
架台の種類で言えば以下のようなもの。
今回のレトロフォーカスというのは原理、原則、特許に由来するカメラレンズとしての確固とした「専門用語」として定着しています。それを別の意味で使うというのは全くの間違いです。
つまり、専門的な話をするときは「専門用語」を使わないと会話が成り立たなくなりますが、「レトロフォーカス」は天文、天体写真の専門用語ではありません。 天体望遠鏡を使った撮影方式のひとつとしての「レトロフォーカス」は「藤井旭造語」と言っても過言ではないでしょう。そんなものを公の解説書に使うべきではありません。百歩譲って使った場合でも「造語」であることを記載すべきです。
出版社の誠文堂新光社も「天文ガイド」という専門誌を出しているわけですから、意見を出すべきだったと思います。
整理すると「用語」の条件は以下です。
「レトロフォーカス」は発明に由来する「天体写真撮影以外」の分野での専門用語であり、全く別の意味で使われています。そんな用語を天体写真用語として使うのは天文の専門家としては失格だと言えるでしょう。
一般的な望遠鏡を使った天体写真撮影の方式が分かると思いますので、ボーグという望遠鏡のアクセサリパーツの紹介です。 例えば以下の「コンパクトエクステンダー」はこの記事の話題のバーローレンズと同じ機能のものです。以下を見ればわかるとおり、「レトロフォーカス方式」なんて用語は全く使っていません。そんな用語をわざわざ作ってまで使う必要なんてないからです。
セコメントをする